2014-12-06 歩く ふつうの日常 セールスマン風のその男の人は、形の崩れた黒い営業かばんを持ち、焦点の定まらない目をして、膝を曲げ、残暑に背中を押されるように歩いていた。 訪問販売のノルマがあるのだろうか。そのノルマは、彼がどんなに努力しても達成の見込みがないのだろうか。 彼は歩く。右足を前に出し、その次に左足。そうすれば自然に一歩前に進む。人生はそのくり返し。そうやって、彼は生きている。そうやって、わたしたちは生きている。