黒猫 サビ猫 毎日が三拍子

人生は三拍子、ときに変拍子。

「美しい庭のように老いる」ということ。

 

「美しい庭のように老いる」。
故 宮迫千鶴さんが、2001年に出版した本のタイトルだ。副題に「私の憧れの老女たち」と記されている。
1950年代のフランス人女優、シモーヌ・シニョレ、森のイスキアの佐藤初女さん、ターシャ・テューダー、沖縄のおばあたち、映画「八月の鯨たち」の老姉妹。
宮迫さんにとっての魅力的な「老女たち」を紹介しながら、彼女の理想とする老いについて語っているエッセイ集だ。
悲しいことに宮迫さんは、この本が出た7年後の2008年、60歳という、今の日本社会では老いのほんの入り口の年齢でお亡くなりになってしまったので、実際に彼女がどんな「老女」として生き、ご活躍されたのか、私たちは目にすることができない。

宮迫さん自身があとがきで、


「私の書いたエッセイには、高齢化社会とか介護とか老人問題といった現実的な問題は皆無である。私は私の夢見る老いの世界を、老いることによって到達できる魅力や美しさを、庭の草花に降りた朝露をすくいあげるような気持ちで書いてみようと思ったのである」


と記しているように、この本の中に描かれている「老い」は、透明感にあふれ、清々しいほどに美しい。
が、だからこそ、義父母を看取り、老人ケア施設でボランティアをし、80代の実の両親を見守り、そして自らも60歳へのカウントダウンが始まって、リアルに「老いの現実」の真っ只中にいるわたしの魂は、森の中で澄んだ泉に出合ったように、この本に書いてある世界に、どこか憧れにも似た共感を抱いてしまうのだ。

絵空事?きれいごと?現実逃避?
そうかもしれないし、違うかもしれない。

40代の終わりに初めてこの本を読み、今、50代の終わり。
これからわたし自身が実際に、この本を携えて、これから老いの林で暮らし、確かめてみようと思う。

魔女鼻の持ち主なので、精神的だけでなくビジュアル的にも「かわいいおばあちゃん」にはなれそうもなく、往生際も悪いので、肉体の衰えにはジタバタと虚しい抵抗を試みながら、気負うことなく、ゆるゆると、「老い」という庭のガーデニングを楽しむつもりだ。

それではこれから、そんな日々のあれこれを、こちらでフィクション、ノンフィクションに関わらず、書いていきますので、どうぞよろしくお付き合いください。

 

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